Please smile 5/6.

笑顔をください。5/6.

二人で楽しそうに笑う老夫婦の背を見つめあたたかな気持ちが心いっぱいに溢れそうになっていると
豚のそぐ傍のメリーゴーランドの灯りがまた街灯の時と同じように、ぼんやりと色を取り戻し始める
その光を感じると、メリーゴーランドの方へ振り返りる豚。

豚　「あ……　また、色が戻ってく……　メリーゴーランドの光……」

そうぼそり呟くと、その周りをまた見回し

豚　「でもまだ、街灯とメリーゴーランドだけ、他の色は白黒のままだ…… どうしてだろう？　何でまた急に…..」

と、空を見上げるが

豚　「月はまだ、白いままだ…… 空の星も、どうしてだろう？　でも、あたたかい気持ちになったらそのたびに色が増えていく。
　　　笑顔に触れたら、色が戻っていく……　僕は色を失ったんじゃなくて、心を失っていたのかな……　
　　笑顔を配るばかりで、いつの間にか自分の心には笑顔が空っぽになっていたのかな……　」

と、メリーゴーランドが回り始める
そんなメリーゴーランドをじぃと見つめる豚

豚　「懐かしいな…… 小さな頃、僕もここに連れてきてもらったな、あの頃はまだみんな生きていた。
　　　でも今は、もう一人だ……　あんなことが起こらなければ、まだみんな普通に笑ったり怒ったり喧嘩したりし
　　ていたのかな……　あんなことが起こらなければ…… 」

と、豚の背後に現れる無数の人影

声　「おい。何してるんだよ、まだ仕事中だろ？」
豚　「……？」

そのどこか聞き覚えのある声に、振り返る豚
しかし、ぼんやりと黒い影が見えるだけでその声の姿ははっきりとは見えない。

声　「兄ちゃん、さぼりだ！」
豚　「兄ちゃん……? この声……」
声　「ねぇ何してるの、ボケっと突っ立って、しっかりなさい！」
豚　「……え、母ちゃん？　そうだよね？　今の声、ゆうきに父ちゃん？　みんな、どうして？　何で……？」
声　「お前が心配だから、逢に来た。」
声　「情けねぇな、そんな泣き虫だったっけ兄ちゃん？」
豚　「泣いてないよ。でも、訳が分からない……」
声　「今はお盆中よ、様子を見に来たっていいじゃない。この時期しか会いに来れないんだから……」
豚　「母ちゃん？　みんな声は聞こえるのに姿は見えないよ。影しか見えない。会いに来たなら顔見せてよ！
　　もっと近くに来てよ。今、俺目がおかしいんだ。映る世界の色が白黒で、
　　街灯のオレンジと、メリーゴーランドの光しか見えない。」
声　「それは、その豚の頭のいせいだよ。」
声　「兄ちゃん、今、泣いてる？　それとも笑ってる？」
豚　「どっちでもない。わからない。」
声　「ごめんね。こんな日しか会いに来てやれなくて、みんな忙しくなってね……」
豚　「忙しいって、死んでも忙しいとかあるの？　だったらこっちに戻って来ればいいじゃん。」
声　「行けないんだ。まだ。」
豚　「何でもいいけど、せっかく来たなら顔くらい見せてくれよ。笑顔を見せてくれよ。」
声　「目を閉じてるのはお前の方だよ。見てごらんちゃんと」
声　「兄ちゃん。ちゃんと見て。」
豚　「見てるよ。でも見えない。世界が変わっちゃったんだ。」
声　「うん。そうよねまだ見たくないもんね……」
豚　「母ちゃん何言ってるの？　見たくないって、そんなんじゃなくて、見えないんだよ見たくても、見えないんだよ！」
声　「兄ちゃん、兄ちゃんじゃなくて俺だったら良かったのに……」
豚　「ゆうき？　お前まで何言ってるの？　僕じゃなくてゆうきだったらって、意味わからないよ。」
声　「そう言う事なのよ…… 私たちに笑顔をくれようと思って頑張ってるんでしょ？」
声　「もう見てられないよ、頑張らないでよ。俺たち笑えないよ」
声　「ありがとう圭太。」
豚　「……懐かしい、そんな風に名前で呼ばれるの……　あれ？」

と、豚の目に映る世界が一気に真っ暗になる。

豚　「……みんな？　どこに居るの？　何も見えない。真っ暗だよ……」

つづく

今日もありがとうございました。
そして、あたたかなコメントありがとうございました。
どうか明日が穏やかな日曜日でありますように。
優しい風が吹きますように
また明日。
紡ごう……

Hello,How are you doing today?
I hope you have a Great Sunday.
May a good wind blow all over the world.
See you Tomorrow……

Akihiro Takahashi